一人親方として開業

一人親方として開業していこうとする場合、様々な準備が必要になります。健康保険の切り替えや保険の加入、資金の準備、周りに伝えるなどやることはたくさんあります。今回は、一人親方として開業するにあたって、準備する資金や保険について紹介します。

資金はなにが必要?

【初期費用】

一人親方として開業をする上で必要なのはまず事務所です。建設業の場合は重機や工具なども初期費用のうちの1つです。

ただ事務所に関しては自宅兼事務所の人もいますし、倉庫のある場所を事務所として登録する人もいます。そのため、すべての人が事務所を必要とするわけではありません。

実際自宅を事務所として構えている一人親方は多いと思います。特に事務所を準備する必要がなければ、事務所を用意する資料は初期費用として考えなくてもいいかもしれません。

建設業の初期費用としては、車両と工具がメインと考えられます。

【運転資金】

1人親方として開業するときに大切なのが運転資金を確保することです。運転資金は事業を行う上で必ず必要になります。仕事を受注し、完了させたとしてもすぐに入金されるわけではありません。入金までに費用が発生した場合に支払いが出来ないと黒字倒産のリスクも考えられるため、運転資金はあればあるほどいいでしょう。

資金調達の方法は

開業にはある程度資金が必要であることが分かったと思います。それでは、どのようにして資金を準備するのでしょうか。いくつか紹介します。

【貯金】

独立資金として基本的に考えたいのは借金をせずに貯金で賄うことです。

建設業の場合、実務経験が数年あれば、独立資金としてお金を貸してくれる所は多いですが、基本的にお金を借りると利子が発生するので借金をせずに運営する方がいいです。

ですから現金があればそれに越した事は無いので、独立する前に貯金をして独立資金を貯めると言う方法が理想です。

【政策金融公庫】

借金の方法の1つとして、日本政策金融公庫の創業資金制度を活用する方法があります。政策金融公庫の創業資金は、基本無担保無保証人の融資制度なのでリスクは低いです。

利率も低く1%程度から高くても3%を超えません。

ですから運転資金として初期費用として考えても、利益を出し続けることができれば返せるレベルの借金となります。

事業計画書が必要になるので、先に独立してお金を借りた先輩などに相談しつつ計画書を作成し提出をしましょう。

わからないことが多ければ、窓口に行くと親切に教えてくれるので、いちど訪問してみて下さい。

【ビジネスローン】

ビジネスローンは金利が高いので、ある程度早期に返せる場合のみ選択肢として取り入れましょう。利率が高くなると、長期で返すとどうしても利益を吸い取られていきます。つまり返すスピードが遅ければ会社の資金を圧迫します。基本的にビジネスローンは最後の手段として利用しましょう。例えば運転資金が必要なときに、ビジネスローンを利用するのはおすすめしません。なぜなら運転資金と言うのはどんどん増えていくものなので、返済ができません。常に空中に浮いているようなお金なので、それを準備するときに高利率の借金で賄ってしまうと、ずっと銀行にお金を吸い取られてしまうような形になります。

運転資金に関しては銀行の低金利の事業ローン、もしくは政策金融公庫に借りるようにした方が良いでしょう。

【銀行からの借入】

銀行からの借り入れという選択肢もあります。

ただ創業期に銀行からお金を借りるのは結構難しいでしょう。

客先が決まっていて、利益がほぼ確定しているなどの理由がなければ、お金を貸してくれる銀行はないでしょう。というのも創業したての頃は不安定で銀行はお金を貸したがりません。日本政策金融公庫で借りられない場合、基本的には銀行でも借りる事は難しいです。

【友人、知人、家族からの借金】

基本的にお金の貸し借りは友人としない方がいいという考えが多いですが、事業として収入を見込める計画性があるのであれば、いいと思います。ただし、人にお金を貸すというのはけっこうなリスクであるため、これまでに築いてきた信頼にひびが入る可能性もあることは肝に銘じておきましょう。

一人親方が加入する社会保険

【国民健康保険】

まず挙げられるのが、市町村で加入できる国保もしくは建設関係の国保組合への加入です。法人格を持たない一人親方は、市町村の国保だけではなく、同種同業による組合員で組織されている国保組合に加入することも可能です。国保組合に加入するためには組合員になる必要がありますが、市町村の国保と比べて保険料が抑えられ、給付内容が手厚いという特徴を持っています。どちらに加入するかは個人で判断して構いませんが、必ず国保か国保組合には加入しておくようにしましょう。

【国民年金】

国民年金も、一人親方が加入しておきたい社会保険です。日本では「20歳以上の人はだれでも年金制度に加入する」ことを定めた国民皆年金制度を採用しているため、年金に加入することは義務であり選択の余地はありません。会社員から独立して自営業を営むのであれば、前職の退職日から14日以内にお住みの市区町村において、国民年金の手続きをする必要があります。

【労災保険(特別加入)】

労災保険は義務ではありませんが、できることなら万が一の備えとして加入しておきましょう。労災保険は本来、被用者向けに用意されたものです。しかし、建設業務の性質上、被用者ではない一人親方でも特別加入できるようになっています。加入すればケガや事故があったときに治療費だけではなく、休業や障害が残ったときに対する保障、死亡時の遺族補償を受けられるようになります。

社会保険加入のメリット

【医療保障が受けられる】

社会保険のもっとも大きなメリットは、医療保障が受けられる点でしょう。建設業は、その業務の性質上ケガをするリスクが非常に高くなっています。万が一、高所から転落したり工具でケガをしてしまったりしたとき、社会保険に加入していないと治療費が全額自己負担になってしまいます。健康保険に加えて労災保険に加入していれば、治療費のみならず休業中の保障を受けることも可能です。万が一のリスクに備えて安心して働き続けるためにも、社会保険は非常に重要なものなのです。

【引退後や障害が残った場合の補償】

老後や障害が残って働けなくなったときも、社会保障に加入していれば収入の保証が受けられます。一人親方が国民年金や労災保険に加入しない場合、年をとったり現場でのケガで障害を負って仕事ができなくなったりしたとき、一切の収入が途絶えてしまいます。この状態では生活すらままならなくなってしまい、家族にも迷惑をかけることになってしまうでしょう。社会保障に加入しておくことで、収入が途絶えたときも安心して生活ができるようになります。

まとめ

以上、一人親方として開業を決意した場合の開業資金や社会保険について紹介しました。一人親方を目指している人にはぜひ確認してもらいたい項目ですので、検討してみて下さい。

とくに開業資金は会社を上手く軌道に乗せるために必須の内容です。出来る限り自己資金で始めるのが望ましいですが、借り入れのリスクについてもしっかりと把握した上で、お金を用意するようにしましょう。特に、信頼関係を失ってしまうような借り方はしないでください。