左官工事の仕事は2種類

モルタルや壁土といった材料を使って、建築物の床や壁を塗り固めていくのが左官工事です。手にしたコテを自由自在に動かして、壁を塗っていく職人の姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。一般的に左官工事というと、建築物の表面部分の仕上げを担うイメージが強いかもしれませんが、実際には壁の基礎となる下地造りが多くを占めています。

左官工事の仕事は、大きく次の2つに分けることができます。

壁の下地を造る

壁の下地造りは、建物の竣工時に表に出ることは少ないものの、これがなくては壁造りが成り立たない重要なプロセスです。仕上げがペンキやタイル張りの場合などは、仕上げを活かすための下地造りのみの作業になる場合もあります。

仕上げ塗り

仕上げ塗りは、壁などの表面を塗って仕上げる作業です。土壁や漆喰壁の場合は、下地を造った後で中塗りを重ね、最後に漆喰や珪藻土を使って上塗りを行い、表面全体を仕上げていきます。塗り方によって耐久性にも影響が出るだけでなく、コテの動いた跡がそのまま壁の模様になることもあるため、職人には卓越した技術と芸術性が求められます。

なお、仕上げ塗りでよく使われる上塗りの材料は、次の5つです。


土は、その種類によって壁の表面に個性が出る材料です。基本的には、和室に多く用いられます。


砂を材料として使うと、滑らかな仕上がりになるのが特徴です。和室や茶室のほか、客間や洋室にも使われます。

漆喰
漆喰は、石灰石に砂や糊などを加えて水で練り上げたものです。漆喰は、呼吸する材料だともいわれ、湿度の高い時期は水分を吸収し、乾燥する時期は水分を放出して部屋の中を快適に保ってくれます。古くは蔵の壁に多く使われ、その湿度調整ができる特徴によって貴重な収蔵品を守ってきました。

漆喰の主な原料である石灰石は不燃性で防火性が高いこと、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着・除去してくれることから、現代の住宅にも多く取り入れられています。

プラスター
プラスターは、鉱物質の粉末を水で練った石灰または石膏のことをいいます。白く美しい輝きが特徴で、漆喰壁に似ていることから西洋漆喰と呼ばれることもあります。

珪藻土
海や湖、川の底に堆積して化石化した植物プランクトンの死骸が珪藻土です。完全な自然素材で有害な化学物質を含まないため、アトピーやシックハウス症候群といったアレルギー症状を引き起こす心配がありません。吸水性、耐火性、断熱性に優れているので、暮らしを守るという意味でも注目されている素材です。

左官工事が必要とされる理由

建物を造る上で、左官工事は非常に重要な役割を果たしています。左官工事が必要とされている理由を紹介しましょう。

床や壁の耐久性を高める

左官工事は、床や壁の耐久性を高める重要な役割があります。下地造りは、壁や床の仕上がりを左右する重要なポイントです。仕上げにどれだけ良い材料を使っても、下地の出来が良くないと、ひび割れなどの欠陥が生じてしまいます。

美しい仕上がりを実現できる

壁や床を美しく仕上げられるのも、左官工事が必要とされている理由のひとつです。職人の技によって造られた漆喰壁や土壁は、見る人が思わずはっと息を飲むほどの美しさ。コテの使い方によって変わる風合い、そしてつなぎ目を感じさせない仕上がりが魅力です。

左官職人が手仕事で塗った壁は、ひとつとして同じ物がありません。住宅の細部までこだわる人、自分たちだけのオリジナルの住まいが欲しい人には、左官工事による壁や床は最適です。

また、左官工事は近年、自然素材に注目が集まったことなどによってその良さが見直されるようになりました。職人が生み出す美しい壁や床は海外からの評価も高く、日本文化を形に残し、職人技を伝えていくという意味でも左官工事は重要です。

アレルギー対策になる

左官工事で壁や床を塗るときに使われる素材は、土や珪藻土、漆喰といった自然素材がほとんどです。アレルギーやシックハウス症候群を引き起こす物質を含まないため、リフォームの際にこうした素材を選ぶ人が増えています。

左官に関係ある資格

左官職人の関連資格としてあるのが「左官技能士」です。

都道府県職業能力開発協会が試験を実施しており、左官職人としての知識や技術を証明できる国家資格となります。左官技能士は3級、2級、1級、特級があり3級から取得していく流れとなります。

2級以上となると誰でも受験可能ではなくなり、以下のような条件を満たす必要があります。
・2級左官技能士:実務経験2年以上
・1級左官技能士:実務経験7年以上
・特級左官技能士:1級合格後に5年以上の実務経験

試験の内容としては実技と学科試験があり、実技試験では60点以上、実技で65点以上とれば合格となります。合格率は3、2級は約90%と高いのですが、1級以上となると約30%と低くなります。

受験費用は学科試験が3,100円、実技試験が17,900円となるのですが、35歳以下であれば減額制度を利用することもできます。

左官の平均年収は?

左官の平均年収は、約433万円です。 平均の年収が436万円であることを考えると、 全国平均よりもやや低い水準となっています。年代別の平均年収をみてみましょう。

年代別の平均年収

25~29歳の平均年収は369万円で、30~34歳になると397万円と平均年収が28万円プラスとなります。 さらに、40~45歳になると433万円で、50~54歳になると458万円となります。

出世すると

係長の平均年収は538万円、 課長の平均年収は703万円、 部長の平均年収は848万円です。

左官として就業している人は全国で約7万人というけっして多くはない人数です。国家資格や技術力を身に着けることに大変努力が必要な職種であり、とても貴重な職種といえます。

左官の平均年齢は、40歳以上になっており、現在建設業で危惧されている高齢化が進んでいます。今後若い世代の左官職人が増えていかないと、技術を引き継ぐことが出来なくなってしまうことが考えられています。これにより深刻な人手不足になることも予想されるので、解決策を講じる必要があります。

やりがい

左官のやりがいとして一番に言えるのが、完成後は形として残り続けることがあります。手作業であり、職人が一から仕上げていくため失敗は許されず責任は重大となる一方で、自分が仕上げた建物が完成後も人々の生活を支えていくことは大きなやりがいとなります。

また、一人前になるまでは大変ですが、誰にでもできない仕事をこなすことに誇りとやりがいを持つことができます。

まとめ

今回は左官職人について解説してきました。

左官職人とは、建物の壁や床を塗りの技術により仕上げる職人のことで、平安時代から存在しています。骨組みなどと違い、見える場所の仕上げとなるためきれいで美しく仕上げる必要があり、高度な技術が必要となります。

最近では洋風の建物が増えたことにより、レンガを積んだりタイルで仕上げたりといった仕事も増えてきています。現在左官職人は高齢化により人手不足となっており若手人材の確保と教育が急務となっており、比較的目指しやすい職業です。

将来性に関しても、建築業界には欠かせない存在であるため今後も十分に活躍できると言えます。国家資格を取得できるのも魅力の一つであり、長く残る技術力であるため、ぜひ目指してみるのもいいでしょう。

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