枠型大工とは
『大工』ではなく『型枠大工』とはどのような仕事なのでしょうか。大工という単語からなんとなく現場仕事であることは把握出来るでしょう。しかし大工といってもさまざまな分類があり、型枠大工はそのうちのひとつになります。
型枠大工は建築現場で建造物の土台となる基礎を担う仕事です。もう少し細かく言えば、コンクリート打込み用の型枠、コンパネと呼ばれる型を作る職人なので、直接建築する仕事ではありません。
また、土台だけでなく外壁部分に関わることもありますが、型枠大工が手掛けた仕事を見ることがないので、建築作業を行う職種でなければほとんど知られていない職業です。それでも建築現場ではなくてはならない職業であるため、やりがいのある仕事でしょう。
型枠大工のしごとは建造物の土台を担う仕事ですが、具体的な仕事内容をチェックしてみましょう。「大工」とあるものの、先程も記述したように建物を建てることそのものに関わることはありません。一般的に知られている大工仕事と混同しないように注意しましょう。
型枠大工は親方と子方の2種類
型枠大工には【親方】と【子方】の2種類があり、それぞれに仕事内容が異なります。親方は作業工程のすべてを把握し、下につく職人への指示や技術を伝える役割になります。
そして子方は親方からの指示をもらい、作業したり技術を受け継ぐ位置にいます。一般的な企業と比べると親方が上司、子方が従業員になります。
親方の仕事は依頼者である建設会社から仕事を受け、開始から納期までのスケジュール案を考え、提案します。その後スケジュールに沿って現場作業員へ作業内容を振り分けます。
型枠大工の仕事内容
型枠大工はコンパネを作るだけでなく、それまでの工程も仕事内容に入ります。まずは依頼された建造物のデザイン設計図を元に、必要な型枠図面を作ります。
その後図面に沿って素材となるベニヤ板をカット、パネルを完成させます。現場では型枠を設置する場所の確認や墨出しと呼ばれる印付けをしてパネルの組み立て、流したコンクリートの圧に負けない締め付けを行います。
パネルがコンクリートの圧によって歪みができてしまうと、その後の建築作業に不具合が起こったり安全面で不安があるのでしっかりと締め付けます。寸法やズレがないことを確認したら生コンクリートを流し込みます。
型枠内すべてに生コンクリートを行き渡るようにバイブレイターを使って振動をかけたり、金づちで叩くのでそれなりの重労働となります。
生コンクリートが硬化したことを確認しつつ型枠を外し、不具合がないことを確認すれば完了です。大まかな仕事内容はこちらの表を参考にしてください。
型枠大工と大工の違い
上記『型枠大工の仕事内容』を見ても分かるように、一般的な大工と型枠大工の仕事はかなり異なります。大工と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのが木材を用いて釘やカンナを使って木造建築物を建てる仕事でしょう。
これは一般的に木造大工と言われるもので、同じように木材を使うけれど釘を使用せず神社仏閣の補修を行うものを宮大工と言います。
仕事内容だけを見ても型枠大工は型枠の制作や土台となるコンクリート作りがメインであり、大工は加工した木材などを使い、組み立てて建造物を作るのでかなり違いがあります。また、木造大工は木造建築、型枠大工はコンクリート建築に携わっています。
型枠大工の仕事がきついと言われる理由
どんな職種であってもきついと感じるかどうかは人それぞれです。そのなかでも型枠大工の仕事はきついと言われやすい傾向にあります。やはり職人仕事、現場仕事は体力面や精神面できつくなってしまうことがありますが、そこにはしっかりとした理由があります。
荷上げ
現場仕事は身体面できついと言われることは多々ありますが、型枠大工も例外ではありません。型枠大工の仕事は型枠作りから始まり、組み立てや解体まで行います。
その作業工程のなかに、生コン硬化後に型枠を解体して次の作業場に型枠をなどを2階、3階にあげる作業・荷上げがありますが、この荷上げは手作業なのでかなり重労働になります。
バラした型枠などの材料はそれなりにサイズもあり、重いので手作業で上階にあげるとなればきついのもうなずけます。型枠大工がきつい理由として、特に新人の頃はこの荷上げがかなり大変になるようです。
暑さや寒さ
型枠大工だけでなく建築現場で働く多くの方に当てはまるのが、暑さや寒さのつらさです。型枠大工は土台となる箇所を請け負うため、どうしても屋外での作業がメインになります。
そのため炎天下の下や底冷えする寒さのなかで行う作業はかなりきついものがあります。また、建築現場は雨になると作業ができず、中止になる場合もありますが、土台部分が完成しなければその上に建てる建物の工事が進まないため、型枠大工は雨でも作業することがほとんどです。
もちろん雪が降っていようが作業は行います。台風や豪雨など、災害レベルでなければ作業を中止することはないでしょう。
先輩が厳しい
型枠大工がきつい理由として先輩が厳しいことも挙げられます。これは職人の世界であればある種当然とも言えるきつさですが、やはり危険な作業が多いことはもちろん、ほんの僅かのミスがあれば建造物そのものに影響を与えかねません。
さらに建築現場ではさまざまな作業を行っているため、大声でなければ聞こえない場合もあり、厳しい印象を受けることもあります。しかし先輩が厳しくするのは安全に作業を進めるためや、ミスを出さないための指導と考えれば納得です。
型枠大工のやりがい
型枠大工はきついと言われがちですが、そのなかでもしっかりとやりがいを感じられることもあります。普段厳しい先輩から褒めてもらうだけでも嬉しいですが、さらに仕事にやりがいを見出すことができれば、自身の成長にもつながるでしょう。
誤差なく完成
型枠を作るときはもちろん図面を参考に寸法通りに仕上げます。しかし組み立てたときに若干の誤差が出る場合もあります。一般的に型枠の誤差許容範囲は3mmとシビアな世界です。そんななかで誤差なく型枠が仕上がったときには素晴らしい達成感があります。
技術を習得
どんな仕事でもできることが増えるとやりがいを感じます。型枠大工でもさまざまな技術を必要としますが、その技術を習得できたときは、やりがいと共に達成感を得ることができるでしょう。
技術的には先程の型枠を誤差なく完成させることもそうですが、他に型枠を設置する場所の墨出しやパネル加工、生コン硬化や解体などがスムーズに行うことができるようになったときにやりがいを感じます。多くの技術を習得することで一人前に近付き、型枠大工の仕事にやりがいを見いだせるようになるでしょう。
型枠大工の資格
仕事でスキルアップするためには職種に適した資格を習得することもひとつの手段です。型枠大工は採寸や組み立てなど緻密さを必要とする仕事であり、もちろん必要な資格も複数あります。
資格を取得することはスキルアップだけでなく、昇給するためのチャンスでもあるため、型枠大工として仕事を続けるなら資格取得をおすすめします。仕事をする上で役に立つ資格をチェックしてみましょう。
型枠施工技能士
型枠大工としてある程度の仕事ができるようになったら最初に取得したほうが良い資格が国家資格である技能検定のひとつ『型枠施工技能士』です。
型枠を作るために必要な図面を作成、組み立てるための技能を認定する資格で、1級と2級があり、そのなかでも上級技能者と中級技能者に分けられています。資格を取得するためには、数年以上の実務経験が必須なので、型枠大工になりたてでは受験することはできません。
型枠支保工の組立て等作業主任者
施工責任者や事業主になることを視野に入れている場合に必要な資格です。設置作業などを指導できるもので、工具点検や安全面での監視・指導も可能になります。
上記型枠施工技能士取得後に目指す資格となり、受験するためには型枠組立て・解体作業経験が3年以上、土木・建築関係の学科を専攻・卒業していること、型枠大工の実務経験2年以上などが必要となります。
建築施工管理技士
現場での指揮・監督ができる国家資格で、特に型枠大工に必須である資格ではないものの、取得していれば信頼度がぐんとアップします。1級と2級があり、1級であれば大規模な、2級では中小規模の工事現場を管理することが可能になります。
型枠大工に必要な資格はありますが、転職時に必ず要るものではありません。どの資格も数年の実務経験が必須となるので、いきなり資格取得はできません。
そのため型枠大工経験がない方でも就職することができ、仕事をしながら資格取得する場合がほとんどです。場合によっては資格を取得するための支援を行っている会社もあります。
型枠大工の給料手取り
手取りは21万円前後となります。日当が多く、手当なしで、平均10時間労働、休憩が法定通りで、残業代も含めるとしたら、1万弱と見るのが妥当ですので、工期にもよりますが、大体、事業主以外の型枠大工個人の給与はこのあたりに収まります。
型枠大工になるには?
まずは大工見習いから始めるのが通例ですので、既にある型枠大工事業者に雇用を求め、そこで技術的指導を受けなながら、最終的に施工図や材料段取り等の指導が出来る立場で、スキルを上げて、給与を「能力給」としてもらえる立場になることです。
大手事業者の場合は、養成施設など通じて、専門工を育成するところも出てきています。資格は、一級型枠工技能士などがあります。
事業主や、施工の責任者になるには、国家資格である、型枠支保工の組立て等作業主任者の資格を取る必要があります。
土木専門、公共事業請負、マンション施工専門のハウスメーカーの下請けなど、裾野はかなり広いです。
まとめ
以上、枠型大工について紹介しました。大工とは違う枠型大工に興味を持ったらぜひ、目指してみましょう。