ボード工事とは
一般住宅やマンション、店舗やオフィスなどの施工時に壁や天井の下地となる部分を作っていく工程のことを言います。
軽天(軽量鉄骨下地)と呼ばれる軽い鉄でできた棒のような形をした素材を格子状に組んで固定していきます。その格子状に組んだ鉄骨に主に石膏素材で作られたボードを隙間なく貼り、パテで隙間を埋めていきます。
難燃性に優れ、短納期で施工が可能なことが、結果として人件費抑制につながり大幅なコスト削減につながり、木造の家屋をのぞいてほとんどの建物の内装はこの工法が用いられています。
ボード工事のメリット・特徴
ボード工事が主流になった背景にはさまざまな理由があります。大きくは先に述べた時間削減とコスト削減によるものですが、他の特徴や利点についてまとめて説明をします。
防火・耐火素材としての役割
石膏でできているボードは燃えることがありません。石膏には大量の水分が含まれており高温にさらされることでこの水分が蒸発し、温度上昇を遅らせる機能を持っているからです。
また、石膏そのものが熱の伝導防止する特徴を持っています。
そのため石膏ボードは防火材料に認められており、壁の防火、耐火の役割を担い、家屋や店舗などで火災が起きた際の延焼防止効果を発揮します。
加工のし易さ
石膏ボードは貼り付けを行うにあたり、切断やビス止めなどを行います。切断には特殊な器具などは必要なく、文具用のカッターなどでもカンタンに切断ができます。
石膏を合紙で挟んだカンタンなつくりである半面もろさもあるため注意が必要です。
防音・遮音性に優れている
遮音性能はマンションなどの集合住宅や共用部分などで重要な役割を果たします。他にも映画館や音楽スタジオ、機械室などでも高い遮音性が必要です。
一般的な石膏ボードでもある程度の防音性能を保有していますが、他の木材との併用や、防音性能の高い石膏ボード、工法(グラスウールの利用、石膏ボード二重貼り)などにもよりさらにその性能を高めることもできます。
耐アレルギー性能
石膏でできているボードは調湿効果を持っています。そのため室内のカビや結露を抑える効果が期待されます。
アレルギーの原因となるカビの発生を抑える効果がありますが、いっぽうで石膏素材そのものによるアレルギーを持っているケースもあります。そのようなケースでは化粧石膏ボードなどを用いることでホルムアルデヒドを吸収分解する効果を得ることができます。
ボード工事に用いられる種類と素材
一般的に用いられる石膏ボードのほかに特徴を持ったボードがあります。目的やs高場所に応じて併用して仕上げていきます。
石膏ボード
一般的に多く利用されている石膏ボードです。遮音性、耐火性、防火性を備えており、主に天井や壁の下地に使用されています。石膏を芯にしており、両面をボード用紙で挟んで成形をしています。
強化石膏ボード
無機質繊維を混ぜて作られたボードです。通常の石膏ボードは衝撃に弱くもろいという欠点をカバーできる素材として、高い耐火性、衝撃性を保有することから、キッチンの壁や外壁などに用いられます。
シージング石膏ボード
石膏ボードの両面に防水加工を施しています。石膏ボードは吸水することで強度が低下しますが、吸水しても劣化しにくいのが特徴です。主に水回りとなるキッチンや洗面所の壁、屋根に使用される石膏ボードです。
石膏ラスボード
珪藻土やモルタルなどの左官仕上げで塗料の付着を良くするために表面に穴があけられている石膏ボードです。
天井や壁の内装下地として使用されています。
防音ボード
石膏ボードにいくつもの穴を開けることで吸音機能を備えたものです。穴に音が吸収されることで防音効果を発揮します。学校の音楽室、視聴覚室などよく目にしたことがあるかもしれません。
防音対策には石膏ボードの上に貼る遮音パネル、遮音シートなど仕上げによって複数の施工方法が存在します。
化粧石膏ボード
表面に塗装加工や装飾加工を施した石膏ボードのことを指します。主に壁や天井の仕上げ材として使用されています。
ボード工事に必要な工具
ボード工事では現場の状況などによって使用する工具はさまざまです。主な作業はボードのカット、ビス打ち、パテ埋めにはなりますがその過程において必要な工具も含めて紹介します。
電動丸鋸
石膏ボードの切断に使用します。主に石膏ボードの切断時には粉じんが大量に出るため、集塵丸のこと呼ばれるものを使用します。チップソーを使うことで切断面がきれいに仕上がるため面取りなどの仕上げ作業は不要です。
カッター
石膏に貼られているボード紙をカットし、そこからボードの芯を折り曲げることで切断します。欠けてしまうことや切断面が荒くなってしまうので切断面を整える必要があります。
ねじ打ち機(ターボドライバ/スクリュードライバ)
石膏ボード貼り付け時のビス打ちに使用します。コンプレッサーの圧縮で素早く作業をすることができます。先端にネジを取り付けて押し付けるだけでボード貼りができます。ロールビスとバラネジ用などがあります。
エアタッカー
空気圧の力でステープルを打ち込むことができる工具です。石膏ボードや壁パネル、シート打ちにも使用されます。高圧用と常圧用の2種類に分かれます。
コンプレッサー
ネジ打ち機やエアタッカーに空気を送り出す装置です。
集塵機又は掃除機
石膏ボードの加工では大量の粉じんが出ます。粉じんを収集するために掃除機や集塵機を準備します。
ボードやすり
ボードの切断面をけずります。ボード貼りでは切断面同士をぴったりとくっつけることが重要です。細かい部分をこの工具を使って調整を行います。
スケール
現場サイズを測ったり、ボードのサイズを調整したりするのに使用します。主に長尺定規と呼ばれる1.5m~2mの長さの定規を使用します。
面取りカンナ
石膏ボード専用のカンナで石膏ボードのほかケイカル板ボードなどにも使用します。カットした側面を平らに仕上げるのに使用します。
パテべら
ボードとボードの間をパテで埋めるのに使用します。
ボード工事の作業工程
ボード工事の作業工程は、間仕切りなど基本構造を仕上げるとともに、内装をキレイに仕上げるための重要な役割を担っています。ボード工事の流れをご紹介します。
ボードの加工
施工場所のサイズに合わせてボードの裁断を行います。裁断には電動丸のこか、カッターを使用します。カッターを使用する場合は1mm~2㎜程度の切り込みを入れ、折り曲げます。折れたボードの切り目を入れていない面のボード紙をカットします。
曲面を表す場合には細長い板状に何枚もカットし、つなぎ合わせることで曲面を表現します。
カットした面はやすりや面とりカンナを用いて壁や枠にピッタリとくっつくように滑らかに仕上げます。
ボードの貼り付け
ボードの貼り付けはビスを使って止める方法とボンド(糊)とタッカーを使って止める方法の2種類あります。
ボードを柱や枠に隙間があかないようにピッタリとくっつけタッカーやビスで固定します。タッカーやビスを打つ間隔が広すぎると強度が弱くなってしまいます。適切な間隔を保って工事を行うことが大切です。
パテ処理
ボードとボードの継ぎ目をパテで埋めていきます。この時、寒冷紗と呼ばれる網目状になった繊維状のテープを割れ目に貼りつけます。ボードの割れなどに対応するためです。
下パテと呼ばれる先の工程の後、上パテと呼ばれる細かな粒子のパテを平らにならし、乾燥後にサンドペーパー等を用いて凹凸がなくなるまで研磨します。
その後粉じんをしっかりと除去し、乾燥させます。すべての工程で十分な乾燥期間をとることが重要です。
その後クロス貼りや塗装などの仕上げへと進みます。
ボード工事を丈夫にきれいに仕上げる注意点
ボード工事はクロス張りや塗装仕上げをきれいに仕上げるための下準備の役割を担います。そのためにはいくつかのポイントがあります。ひとつひとつ順に説明していきます。
隙間をピッタリと貼り付ける
何枚ものボードを貼り合わせることで完成するボード工事では雑な作業でボードとボードの間に隙間を生じさせることにつながります。
隙間が生じることで後工程の塗装やクロス貼りがキレイに仕上がりません。隙間なくボードを貼ることは内装の仕上がりを決める重要な要素です。
継ぎ目を平らにパテで埋める
ボードとボードの継ぎ目をそのままにしておくとひび割れを起こす原因です。継ぎ目はパテで埋めていき、凹凸なく平らに仕上げることが重要です。
壁全面をパテで覆う「総しごき」と呼ばれる方法もあります。
ビスピッチと留め方に注意
貼り付けたボードをビスで固定するときに適切な間隔で留めることも重要です。ビスピッチと呼ばれ、ボードの種類や工法、大手のハウスメーカーなどによって決められています。ビスピッチを広めにとってしまうと石膏ボードが弱くなり、面として強度を保てなくなります。
また、ビスの頭がボードから出っ張った状態で、デコボコになってしまった状態だと後工程のパテ処理でもうまくできなくなるため注意が必要です。
ボード工の平均年収
内装工の仕事の平均年収は約431万円。日本の平均年収と比較すると低い傾向にあります。月給で換算すると36万円、初任給は21万円程度が相場のようで、アルバイト・パートや派遣社員では平均時給がそれぞれ1,097円、1,395円となっています。
正社員の給料分布を見てみるとボリュームが多いのは416〜477万円の水準で、平均年収の431万円もこのゾーンに含まれています。
全体の給与幅としては296〜778万円と比較的広いため、勤務先や経験・求められるスキルによっても大きな差があると見受けられます。
まとめ
以上、ボード工について紹介しました。ボード工は石膏ボードを天井に張り付ける際に固定しなければならないので、ある程度筋肉がひつようになります。慣れれば、コツなどを見つけられるとは思いますが、非常に体力を消耗する職業なので、体力作りも行いましょう。