美術工芸品の匠、刀鍛冶職人

一般の人が思いつくであろう鍛冶職人の最もメジャーな分野がこの刀鍛冶ではないでしょうか。その名の通り、侍達が帯刀していた日本刀を打つ鍛冶屋の事を指します。彼らは別名刀工や刀匠と呼ばれ、現代では神聖な行事や美術工芸品としての刀の製造に携わっている方が多いです。

一般的には観賞用の美術工芸品として製造・販売される事が多い日本刀ですが、居合道や抜刀道といった武道にも用いられ、海外からも評価の高いものとなっている今、それらを鍛造する刀鍛冶職人にも注目が集まっています。

変遷

刀鍛冶の歴史はかなり古く、すでに古墳時代以前から鉄製の刀が作られていたと記されていますが、現代に残る日本刀の鍛造方法は基本的に江戸時代に考案されたものです。刀鍛冶の工房は江戸・明治初期までは全国に多くありましたが、廃刀令や刀狩りによって激減してしまいました。

2000年代には職人の数が200人以下にまで減っており、伝統の技の継承が困難な状況になりつつあります。後継者不足や、技を教える職人たちの高齢化も大きな問題として挙げられています。

仕事内容

刀鍛冶職人の仕事は玉鋼と呼ばれる特別な鋼を作る所から始まります。これは日本独自の製法でつくられており、日本刀の持つ刀としての強度やしなやかさを出すのに必要不可欠なものとなっています。その後は積み沸かしという欠片を積み重ねて熱して鍛接する作業をし、折り返し鍛錬・鍛接、作り込み、素延べ(刀の形に伸ばす作業)、火造り(火を入れつつさらに整形する作業)、荒仕上げ、土置き(焼刃土を塗り冷却スピードを調整することで部位によって硬度差をつける作業)、焼入れ(焼いてさらに硬化させる作業)、鍛冶押し(研いで形を整える作業)、中心仕立てなど、合計で20以上の工程を経る必要があります。

日本刀の原型が完成した後は、研師、鞘師、白銀師など、約10人前後の職人によって仕上げられて完成に至ります。

まとめ

現在、日本刀の鍛造には文化庁からの許可を得る必要があり、年間で一人24振りまでしか作る事が許されていないため、日本刀の製造のみで食べていく事は難しく、包丁やナイフなどの商品も作って生計を立てている職人が多いのが現状です。

しかし、日本の文化であり、他国にはない洗練された技術を絶やさないために国も動き出しており、未来が無い訳ではありません。

次章では、刀鍛冶に興味を引かれた人達のためにも、そのなり方について解説していきたいと思いますので是非読んで頂けたら幸いです。