希少性高!鋏鍛冶職人の世界

鋏と聞くと、丸い柄が二つついたハサミを思い浮かべる人が多いかと思います。勿論そのハサミを含まれますが、基本的には二つの刃で何かを切り取る物を総称して鋏とよび、爪切り等の日用品から園芸用の枝切り鋏まで多くを網羅しています。そんな鋏鍛冶職人も今ではその数が減っており、後継者不足に陥っているのが現状です。

変遷

実は鋏鍛冶職人というジャンルが産まれたのは江戸末期から明治にかけてと言われており、一般家庭にも鋏が普及し、洋装の衣服が流通し始めた事で需要が増加し、比例して鋏鍛冶屋が増えたと記されています。また、廃刀令によって日本刀を作る事が難しくなった刀鍛冶の職人達が転身した事も理由の一つだと言われています。

やはり手作業の試練というべきか、機械化による大量生産が進むにつれて鋏鍛冶職人の数が減少していき、現在伝統の技を受け継ぐ職人は全国でも数人しかいません。

仕事内容

継承されるべき伝統的な製法として、刃から柄まですべてを叩き出しで作る「総火造り」というものがあります。おおまかな工程としてはまず鉄を熱し、持ち手部分から叩いて形成するところから始まります。その後刃の部分では鋼を鍛接する事で強度を出しつつ形を整えます。形成後は刀付けと研ぎという二つの作業をしつつ、焼入れ、急冷をする事で硬度を高めます。仕上げには刃の部分を研磨し、二つのパーツを目釘という接合部材で組み合わせる事で鋏が完成します。

これらの工程は一人の職人の手によって、全て手作業で行われ、そのペースは日ごとに少しずつ進められるものとなっています。

鋏鍛冶職人になるための工程

鋏鍛冶職人になるためには他の鍛冶職人同様に、師匠を見つけ、弟子入りする事から始まります。刀鍛冶と違って鋏鍛冶には必要な資格や修了試験はありませんが、鋏鍛冶職人として一人前と認められる程の技術力を身に着けるまでには約10年から15年程かかると言われています。また、師匠とる職人達の年齢も高齢化している事から体力的、経済的にも弟子をとる攻防が少なくなっており、求人や受け入れ先が減少しているのが現状です。一応日本で有名な鋏の産地としては兵庫県や高知県、鹿児島県が挙げられるので、弟子入りを考えている人は工房か組合へ直接問い合わす必要があるかと思います。

まとめ

現代では鍛冶職人のなかでもマイナーな部類に入ってしまう鋏鍛冶職人ではありますが、熟練の技で作り上げられた鋏は海外でも広く評価されており、決して失われてはいけない文化・技術の一つと言えます。もし興味を持った方や、鋏文化の将来性を感じた人は是非、その熱意を工房にぶつけてみてはいかがでしょうか。