一人親方は通常の労災保険はNG!

建設業に携わっている人で現場作業には付きものなのが、労働中の怪我でしょう。

勤務中だけでなく、職場に向かう通勤中に事故にあう可能性もあります。そんなもしもの時に備えておくのが「労災保険」ですが、通常の労災保険の加入対象に一人親方は含まれないのをご存知でしょうか。今回は、一人親方の労災保険について解説していきます。

一人親方とは?

そもそも「一人親方」とはどういった人を指すのでしょうか。

建設業(厳密には、林業や漁業従事者、医薬品販売者など様々)に携わる事業主で家族や個人で事業を行っている人のことを指します。職人としての技術とマネジメント力、経営スキルを身に着けているため、現場のスケジュール管理や調整を行うことも可能です。

一人親方がどのように仕事をこなすのかですが、基本的に仕事を請け負ったら、繋がりのある下請け会社と共に事業を進行させます。

労災保険とは?

労災保険は、労働者(雇用されている人)が勤務中や通勤中にケガしたり、病気になったり、万が一死亡してしまった場合に保険が給付される制度です。「労災保険」は略称であり、正式には、「労働者災害補償保険」と呼ばれる社会保険の一つです。

対象者は、正社員に留まらず、アルバイト・パートにも当てはまるため、雇用主は一人でも雇用している人がいれば、労災保険に加入しなければなりません。

業務災害と通勤災害

労災保険は勤務中の「業務災害」と職場への通勤中の「通勤災害」の二つを想定しており、関係があるかどうかで補償対象が決まります。

業務災害では、機械に巻き込まれてケガをしたり、現場の資材が崩れて負傷するといったことが当てはまり、故意につくった怪我は対象になりません。

通勤災害においても、会社への通勤中が原因として含まれていない限り対象とはなりません。

労災保険の補償内容

労災保険は主に8つに分類されます。

1.療養補償給付

ケガや病気になった場合に、それに関わる療養費用が給付されます。病院での治療や薬などにかかった費用を保障してくれるので、最も多く利用される給付制度です。

2.障害補償給付

ケガや病気が原因で障害が残ってしまった場合に、障害等級が1級∼7級までは障害補償年金が、8級∼14級までに該当する場合は障害補償一時金が支給されます。

3.休業補償給付

ケガや病気が原因で働くことが出来ない場合賃金は発生せず、生活困難に陥ってしまいます。そうならないためにも休業4日目から支給されます。

4.遺族補償給付

万が一死亡してしまった場合に、遺族の人数に対して支給される制度です。配偶者や子供、両親などがいて、その生計の主を担っていたのが亡くなった本人である時に支給対象となります。

5.葬祭費用

亡くなった人の葬祭を行う際に掛かる費用(約60万円)を支給します。

6.傷病補償年金

ケガや病気が長期(療養から1年半)治っていない場合、障害等級に該当する場合に支給されます。障害等級が上がるほどに金額も変わります。

7.介護補償給付

障害補償年金・傷病補償年金のどちらかを受給している中で、1、2級もしくは実際に介護を受けている人に支給されます。ただし、入院中や介護サービスを十分に受けることが出来る施設に入所している場合は対象外になります。

8.他の給付

上記以外にも一部支給される内容があります。例えば、二次健康診断給付などがあります。

一人親方労災保険とは?

それでは、本題の一人親方労災保険とは何かというと、本来であれば雇用されている人しか入れない労災保険に特別に加入できるようにした制度です。

なぜこのような制度が出来たかというと、一人親方の多くが経営者であると同時現場作業を行うことがあるからです。つまり、会社経営の仕事は増えたものの現場で雇用されている人と同じ労働者として働くため、怪我や事故の危険性があるのでその際の補償が必要であるということから誕生した特別条件の加入制度になります。

一人親方労災保険の加入条件

一人親方労災保険の加入条件は、一人親方に定義される業種の人が個人事業主もしくは法人の代表者であることが前提で、1年間で100日未満の労働者使用であることです。

例として、会社に雇用されておらず、個人で仕事を請け負っている人や団体で仕事をしているけれど、雇用関係がない人などが加入条件に含まれます。

加入条件の見極めとして、加入希望者がどのような業務を行っているのかが重要になるため、リストアップしておくといいでしょう。加入時に健康診断を行う必要がある場合もありますので、健康面にも気を付けておきましょう。

一人親方労災保険のメリット

一人親方労災保険の補償内容は、通常の労災保険とほぼ同じと考えて問題ありません。

そのため、ケガや病気、死亡に関して給付金が支給されます。

一人親方労災保険のメリットは、普段は現場に出ることはないけれど、急遽現場に出る必要が出てきた場合の保険にもなりますし、怪我をして治療する費用が掛かりません。

もちろん亡くなってしまった場合に残された家族を守っていく補償もあります。

労働の際に万が一のことがあった場合に備えることは安心に繋がりますので、とても大切です。また、仕事を請け負う上で、「労災保険に加入している」という事実は信頼にも繋がり、仕事を請け負いやすくなります。

一人親方労災保険の費用

保険と聞くと、かかる費用が高く、継続的に支払っていかなければいけないという認識が強いので、加入を渋る人も多くいます。一人親方労災保険の場合、通常の労災保険とは保険料が変わっています。16段階に分けられた給付基礎日額に応じた保険料が適用されるようになっているので、想定の保険料に抑えることが可能です。

入会金も1000円しかかからず、組合費は年間で6000円程度なので、高額を請求されることもありません。よくある更新手数料や労災事故時の手続き手数料、退会時の脱退手数料などは一切発生しません。

一人親方支払方法や保険料

まず、一人親方労災保険料の支払い方法ですが、こちらは一括払いか分割払いを選択することが出来ます。一括払いの場合は、加入月から年度末の3月までにかかる費用を全額支払います。分割払いの場合は、年間で3回に分けて支払いをすることが出来るため、好きな方を選択しましょう。基本的に銀行振替を行うことが多いですが、支払い請求書によるコンビニ払いなどにも対応しています。

続いて、支給額です。労災保険の支給額は3500円∼25000円の給付基礎日額によって異なり、また対象となる給付金によっても変わっていきます。また、保険料も同じなため、無理に高い保険料を支払う必要はなく、安く保険料を押さえたとしても充分な補償があります。

保険料は給付基礎日額が3500円なら年間約20000円で、給付基礎日額25000円なら年間約170000円になります。

一人親方労災保険まとめ

以上、一人親方労災保険について紹介しました。危険な作業の多い現場に出ることがある一人親方。万が一のために労災保険加入を強くおすすめします。もちろん、仕事を受注する上での必須条件にもなりうるので、加入しておくことで損をすることはないといえます。

意外にも、一人親方が通常の労災保険加入条件に適していないことで諦めてしまっていることも多いので、この一人親方労災保険を広く知られることも必要になってくるでしょう。

加入した際のメリットは、とても大きいのでぜひ加入しましょう。