一人親方労災保険組合
一人親方労災保険組合とは、本来であれば従業員が加入できる労災保険に特別制度として事業主である一人親方が加入できるように間に入ってくれる団体です。
労災保険組合に加入することで、一人親方は労災保険の補償を受けることが出来るようになります。
【労働者の場合は会社が手続き】
労働者が労災事故に遭ったら、その保険給付手続きは、本来は被災者が自分で手続きを申請することになっています。でも実際は、そのような手続きの方法を理解している人は多くないでしょう。そこで被災者が所属している会社は、被災者である労働者に代わり手続きを援助することになっています。
【一人親方には会社がない】
一人親方の場合は、労働者のように、雇用された社員として所属している会社がありません。もし、労災事故に遭ったら、自分で完全に理解して手続きできる人ほとんどいないでしょう。一人親方の場合は、会社の役割を団体に置き換える必要があります。会社の擬制が労災保険特別加入団体、組合ということです。
【団体は証明してくれる】
労災保険特別加入団体は、所属している被災者に関することについて証明もします。被災者の氏名、生年月日、住所、連絡先、給付日額などです。労災事故の具体的な内容については、一人親方様の、ある意味自主申告、自己証明となります。
労災保険加入のメリット
一人親方労災保険に特別加入をすると、給付基礎日額に応じた額の補償を受けることができます。なお、通勤途上での事故(通勤災害)においても一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
・仕事中にケガをしても、自己負担なく無料で治療が受けられる。
・治療のために休業した場合、給付基礎日額に応じた額の休業補償の給付がある。
・障害が残った場合、障害の程度と給付基礎日額に応じた額の障害補償がある。
・仕事中の事故で死亡した場合、一定の遺族に遺族の人数と給付基礎日額に応じた額の遺族補償がある。
・元請会社又は所属会社にとっても、労災保険の特別加入をすることで仕事を委託する上で安心感がある。
加入条件
一人親方労災保険には、労働者を使用しないで以下の事業を行うことを常態とする一人親方、または自営業者、その事業に従事する人が特別加入できます。具体的な内容は、「個人タクシー業者・個人貨物運送業者」「建設業の一人親方など」「漁船による自営業者」「林業の一人親方など」「医薬品の配置販売業者」「再生資源取扱業者」「船員法第一条に規定する船員」です。以上の7つの事業を行う一人親方などが一人親方労災保険に任意加入することができます。
労災保険の補償内容
労災保険が適用される労働災害は、業務に起因する「業務災害」と通勤時に起こる「通勤災害」の2種類に大別されます。
【業務災害】
業務時間内や業務を原因として発生したケガ、病気、障害、死亡など。
業務災害と認められるためには、業務遂行性(業務中に起きた事故であること)、業務起因性(業務が事故の原因となったか)の両方の条件を満たさなければなりません。
業務災害が認められる例は、
・作業中の事故
・作業を中断しているときの事故
・作業の準備中または後始末中の事故
・緊急の業務中の事故(台風で飛ばされた会社の屋根の修理等、緊急業務を行っているとき)
・休憩時間中に事務所設備の不具合等による事故
・出張中の事故
などがあります。また、就業先が複数ある方(複数事業労働者)に対して、全就業先の負荷を総合的に評価し労災の判定を行う「複数業務要因災害」が加わりました。
業務上の負荷(労働時間やストレス)によって生じた脳・心臓疾患や精神疾患などについて1つの就業先のみの評価では業務災害と認められない場合に、複数の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定できるか判断します。
なお、複数事業労働者であっても、1つの就業先のみの業務上の負荷を評価するだけで労災認定の判断ができる場合は、これまでどおり「業務災害」として取り扱われます。
【通勤災害】
通勤中に起こったケガや病気、障害、死亡など。
通勤災害として認められるには、通勤中の条件を全て満たす必要があります。
通勤中として認められる条件、
・業務に就くため(通勤)、または業務が終了したため(退勤)に行われる移動であること
・住居と就業先、就業先と次の就業先、単身赴任先と帰省先との間の移動であること
・合理的な経路
・中断(通勤と関係のない行為を行うこと)または逸脱(通勤と関係のない目的のために経路を逸れること)していないこと
などです。
通勤の中断・逸脱を行った場合、その間やその後の移動は通勤として認められませんが、日用品の購入、通院、介護など「日常生活上必要な行為」をやむを得ない事由により最小限の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は再び通勤として取り扱われます。
一人親方労災保険特別加入制度に加入した一人親方の声
実際に労災保険特別加入制度に加入した人はどのように感じているのでしょうか。
【投稿者:A】
建設関係の仕事をしています。身体が資本の仕事なので、怪我や病気などが最も怖いと考えていました。特に、子どもができてからはその思いが強くなりました。一般に、一人親方は補償がないといわれますが、一人親方労災保険に加入しておけば、企業に雇われている方と同じ補償が受けられます。万が一、現場で怪我などをしても、一定の収入が補償されるので、家族に大きな迷惑をかけずに済みます。まだ、実際に保険給付を受けたことはありませんが、補償があるので安心して働くことができています。
【投稿者:H】
建築関係の仕事をしています。一人親方労災保険に加入してよかったと思っています。もちろん、労働災害や通勤災害を補償してもらえる点はうれしいですが、それ以上に大手元請の現場に入りやすくなる点が嬉しいです。現場によっては労災保険に加入していないと現場に入れないことがあります。多くの方が知っているポイントですが、改めて強調したいポイントです。
【投稿者:T】
私の経験では、一人親方労災保険はなくてはならない保険だと思います。過去に仕事で怪我をしたことがあるのですが、休業補償を受けることが出来たいので助かりました。労災保険にはとても満足なのですが、一点だけ不満があります。一人親方が加入する労災保険は、加入する団体により費用が異なります。補償内容は同じなのに、費用が異なる点は納得がいきません。これから労災保険に加入する方には、しっかりと費用を比べたうえで加入してほしいと思います。
【投稿者:S】
先輩に教えてもらって一人親方労災保険に加入しています。保険給付を受け取ったことがないので個人的には大きなメリットを感じていません。それでも万が一の時に補償を受けられる安心感は大きいと思います。ないよりはあったほうが良いお守りのような保険だと思っています。
様々な意見があるとは思いますが、一人親方労災保険には加入しておいた方がいいということは多くの一人親方が承知していると思います。費用面では意見があるものの、加入自体は積極的な印象です。
まとめ
以上、一人親方労災保険組合や労災保険の特別加入制度について解説しました。
万が一の事故のためにも一人親方労災保険への加入を強くおすすめします。悩んでいる方も一度試しに加入してみて下さい。