一人親方になろうとしている人へ

これから一人親方として独立しようとしている人へ。一人親方として収入を得ていく準備は出来ているでしょうか。ここでは、一人親方とは何か、そしてどのようなメリットやデメリットがあるのかを紹介していきます。

一人親方とは

一人親方とは、労働者を使用せずに、特定の事業をおこなう人のことです。従来、建設業の職人が独立すると、一人親方と呼ばれることもありました。

現在では厚生労働省により、一人親方の内容が定義されています。たとえば、労働者を使用しても、年間100日未満とするなどです。業種も建設業・林業・水産業などの7業種に特定されています。

また、一人親方は、基本的に個人で仕事を請け負うのも特徴です。そのため、企業に雇用されて働くのとは異なり、労働者とはみなされません。

請負契約のため、一人親方は仕事の進行方法や量は自分で決められ、報酬は完了した仕事に対して支払われます。

一人親方のデメリット

一人親方になることはいいことばかりではありません。リスクもおさえておきましょう。

【収入が安定しにくい】

一人親方はいわゆる「個人事業主」に該当するので、原則として仕事は自分で受注しなければなりません。そのため、自分で営業活動を行なう必要があります。見積もり作成や宣伝活動もやらなければならないため、一人親方になるととにかく多忙になりがちです。

また、一人親方の場合、仕事の受注量が増えればそれに比例して収入もアップしますが、逆に仕事がなくなると収入はゼロになってしまうデメリットも含んでいます。会社員として働くときのように安定した収入が見込めないため、ハイリスク・ハイリターンな働き方といえるでしょう。

【病気や怪我に対するリスクが高い】

一人親方には有給休暇や休業補償といった制度がないので、仕事を休んだ分だけ収入は減ってしまうデメリットがあります。もちろん、健康管理やリフレッシュのために休むことは重要ですが、病気や怪我のせいで長期休暇を取ることになった場合、収入が完全に途絶えてしまうデメリットもあるのです。

建設業をはじめ、一人親方は危険性の高い仕事に携わるケースが多いので、病気や怪我には十分注意しなければなりません。

【社会的信用が不足】

一人親方を含む個人事業主には「会社」という後ろ盾がないので、どうしても社会的信用を低く見られがちです。大企業と直接取引することも難しく、仕事の幅を思うように広げられないことも考えられます。

また、一人親方は社会的信用に欠ける分、融資やローンの審査で不利になりやすいこともデメリットです。

【社会保険の制限がある】

一人親方は個人事業主なので、雇用保険の対象には含まれていません。失業手当を受け取れないため、会社員と比べて廃業したときのリスクが高いといえるでしょう。育児休業や教育訓練に関する給付も受け取れないので、自分でやりくりする必要がある点はデメリットといえるでしょう。

また、健康保険(健保)や厚生年金に加入できないこともデメリットです。国民健康保険(国保)は保険料が高く、国民年金は受給金額が低いので、その辺りの対策も必要となるでしょう。

【確定申告の手間がかかる】

一人親方は自分で確定申告を行なって、所得税や個人事業税を納めなければなりません。少しでも節税したい場合、帳簿付けや領収書管理もきちんと行なう必要があるので、それなりの手間がかかるというデメリットが発生します。

一人親方のメリット

【単価が高い】

雇われ職人に比べて、一人親方は高い単価で仕事を請け負えます。雇われ職人は会社の役職制度によって報酬が決まるため、頑張っても収入が頭打ちになりがちです。

一人親方には会社員のような役職制度がありません。実績を積み重ね、元請けからの信用を勝ち取れば、その分仕事が増え、単価も上がりやすく収入が増加していきます。

差し引かれていた諸経費や利益分も報酬として受け取れるため、雇われより単価を上げやすいのがメリットの1つです。

【単価交渉ができる】

一人親方は自身で単価の交渉ができます。交渉がうまくいけば、単価を大幅に上げることが可能です。単価交渉を成功させるために、日頃から自分の価値を高めるようにしましょう。自分が貴重な人材であると認識してもらえれば、その価値相応の支払いが期待できます。

また、交渉の方法を学ぶことも大切です。ただお願いすれば良いというわけではなく、自分の強みをアピールし、どのようなメリットがあるのかをしっかり伝えられるようにしましょう。

【仕事を選べる】

仕事を受けるかどうかを自分で決められるのも、一人親方のメリットです。

会社員の場合は、自分の判断で仕事を選ぶようなことはできません。そのため、会社や周りの都合で仕事を受けざるを得ないのが実情です。仕事の負荷を調整できないため、激務を強いられることも起こりえます。

一人親方は自分の裁量で仕事を選べるため、仕事量をコントロールできます。過負荷な状態を避ければ、無理なく働けるでしょう。その他にも、好ましくない現場を避けるという判断を自分でおこなえるのもメリットです。

【自由な働き方ができる】

一人親方の働き方は、会社員のように決まっていません。ほどほどの仕事量に抑えて休日を増やす、資格の勉強をして次のキャリアにつなげるなど、自分の望むライフスタイルに働き方を合わせられます。必要とされれば、働く量を増やすことも可能です。

また、働く場所を選べるのも魅力です。会社員では思うように引っ越しできず、意に沿わない出張を強いられることも珍しくありません。一人親方なら、仕事がある限り働く場所も住む場所も自由に変えられます。

【さまざまなものを経費に計上できる】

仕事に関わる支出を必要経費として計上できるのも、一人親方のメリットです。適切に経費申請をおこなえば、課税対象額を減らせるでしょう。ただし、経費が売上の8割を占めるなど、過剰な経費計上は税務署からチェックを受ける可能性が高くなります。

一般的に、一人親方の経費は売上の3~5割とされているので、その範囲に納めるのが無難です。実態に沿った経費だけを計上するようにしてください。

【上司がいないので気楽】

上司によるストレスがないのも、一人親方の良いところです。上司と関係が悪いと、ストレスを絶えず抱えてしまうことになります。

時には攻撃的な上司からパワハラのような扱いを受け、仕事に悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。いくら働きたい職場でも、人間関係が悪ければ苦痛を伴う仕事になってしまいます。

一人親方のように上司への気遣いが必要ない環境では、余計なストレスをためずに自分の仕事に注力できるでしょう。

【高額な固定費がかからない】

一人親方は個人で事業をおこなうため、固定費を安く済ませられます。固定費は継続的に発生する費用で、売上に関わらず支払い続けるものです。

そのため、固定費は可能な限り抑えなければ、利益を圧迫し続けます。売上が少ないときには、資金繰りに苦しむことになるでしょう。

しかし、従業員を雇わない一人親方なら、毎月支払わなければいけない人件費がかかりません。従業員に貸与するスマホの通信費などに付随して発生するコストも必要なく、事務所代も自宅を使用するなどして節約できます。

まとめ

以上、一人親方になるメリットやデメリットを紹介しました。一人親方は事業主として一人で事業を行います。仕事に責任を持って取り組むことで、収入を上げていきましょう。