労災保険とは

労災保険の加入は任意ではなく、会社や事業所が加入してその場で働く従業員全員に適用される保険です。労災保険は、通勤中や仕事中の災害や事故にあった場合に、お金を受け取ることが出来るものです。労災保険は従業員が加入できるもので、事業主である一人親方は加入することが出来ません。

ですが、経営と共に現場作業も行わなければならない一人親方のために加入できるようにした特別加入制度というものがあります。この労災保険特別加入制度には短期加入制度があります。今回は労災保険についてと短期加入制度について解説していきます。

一人親方とは

建設業を中心に、労働者を雇わずに自分自身のみ、または自分自身とその家族だけで事業を行っているものを一般的に「一人親方」と呼びます。一人親方は、大工工事業や左官工事業、電気通信工事業といった建設業のほかにも、林業、漁業、職業ドライバーなどにもみられます。

一人親方の業務への携わり方には、請負事業者として出来高払制で仕事を受けるケースのほか、労働者に近い扱いで、日給月給制で作業を受け持つケースがあります。

両者とも一人親方と呼ばれているものの、働き方の実態が異なるため、加入するべき社会保険に違いが生じます。そのため、一人親方として働いている場合、自分がどちらの範疇に含まれるかを知っておかないとなりません。

【働き方の違い?】

一人親方の違いは2種類あり、

  • 請負としての働き方に近い「一人親方」

・予定外の仕事を断る自由がある

・毎日の仕事量や進め方などを自分の裁量で判断できる

・報酬は工事の出来高見合いで支払われる

  • 労働者としての働き方に近い「一人親方」

・予定外の仕事を断る自由がない

・詳細な指示を受けて毎日働く

・働いた時間で報酬が支払われる

があります。

短期加入制度とは

短期加入制度とは、本来であれば、長期的に加入する労災保険特別加入制度に1カ月や2ヶ月などの短期間加入することを言います。保険と短期加入のメリットが結びつかない方も多いとは思いますが、一人親方としては、短期加入制度は有難かったりします。

というのも、一人親は経営を行いながら現場に出ることがあります。一人親方によって現場に出る頻度は違いますが、あまり現場に出ないようになった時、急遽現場仕事が入った時に短期加入をするといった方法があります。

短期加入のメリットは、保険料を抑えることが出来るという点です。

短期加入時の注意点

・加入は月単位で1ヶ月もしくは2ヶ月のみの加入。

・労災保険の特別加入は暦月単位での加入となります。

例えば、5月15日から2ヶ月の短期加入の場合、加入期間は5月15日より6月30日までとなります。

・申込み方法は、インターネットからのみ。(加入組合により変わる)

・加入期間の延長および短縮は出来ません。契約期間で脱退になります。引き続きの加入継

続したい場合は改めて加入の申し込みが必要になります。

・支払いは短期加入費用を銀行振込で入金。(加入組合によって変わる)

・特定業務に従事している人は、健康診断が必要になるため、短期加入出来ない場合があります。

・加入申込内容を偽って申し込みをした場合、団体は一切責任を負わない。

などがあります。

短期加入のデメリット

確かに、労災保険の短期加入は一定の一人親方にニーズがあります。しかし、デメリットもしっかりと存在しますので、確認しておきましょう。

【支払額が高くなる】

国の制度である労災保険は、数ヶ月未満のいわゆる短期加入を想定していません。労災保険特別加入団体は、新たに労災保険の加入者が申し込みをしたら、年度末まで加入することを前提として労働局に加入の届出を提出します。つまり、短期の期限を設けた提出は行っていません。労災保険の制度上、中途脱退が認められているので、その方法を利用して短期加入出来るようにしているだけです。場合によっては、労災保険特別加入団体が年度末までの労災保険料を国に立て替え払いすることになります。そのような背景があるため、月割りで計算すると割高になるように設定されているはずです。

【労災認定が厳しい】

短期加入の場合、また短期加入を繰り返した場合、万が一の労災事故時に、労働基準監督署での労災認定が厳しくなります。どういうことかというと、もし事故が起こった場合に加入してまもなく事故に遭ってしまったことになるからです。もちろん加入直後であるからという理由で労災が適用されないということはありませんが、保険加入直後の事故の場合、審査は当然厳しくなります。非常に細かいところまで根掘り葉掘り確認されるでしょう。

民間の保険会社でも同じです。生命保険に加入した途端、死亡したら念入りに調査するのと同じなのです。保険という性質上このようになります。

短期加入はどれくらいある?

実は、短期加入が出来る労災保険は相当の数が存在します。保険料に関しても保険によって様々ですが、ほとんど変わらないことがほとんどです。インターネットでの加入登録が出来、即日加入が出来るというものがほとんどです。また、手続きに関する手数料は一切かからないことが大半になります。

労災保険のメリット

常態として労働者をしない一人親方の方が労災保険に特別加入するメリットは、仕事上で心身に支障をきたしたとき、労働者並みの労災補償を受けられるという点です。

たとえば、業務上の負傷などの治療が、自己負担なしで病院、薬局等で受けられます。

その他、労働ができない場合、休業4日目から休業補償給付や、障害が残った場合の障害補償給付、万が一死亡した場合には、遺族に対して遺族補償給付などを受けることができます。

なお、特別加入する際の給付基礎日額が低い場合、労災保険料は安くなりますが労災保険給付額も低くなりますので所得水準に見合った適正な額で加入してください。

一人親方が従業員を雇った場合は

一人親方として労災保険に特別加入した方が、その後に事業規模が大きくなるなどして従業員を雇った場合、労災保険はどうなるのでしょうか。

この場合、年間100日以上労働者を使うことになった時点で、「一人親方」の労災保険ではなく「中小事業主」として労災保険に加入し直す必要があります。また、従業員の方は雇用保険に加入させることになります。補償内容は同じです。

一人親方労災保険にデメリットはあるのか

一人親方労災保険の加入は強くおすすめするものの、デメリットもあるのではないかと不安になる人もいると思います。労災保険加入のデメリットを見ていきましょう。

【労災組合に加入する必要がある】

本来、労災保険とは事業所単位で加入するものです。そのため、個人事業主である一人親方を加入出来るように様々な労災組合が設立されました。労災保険の特別加入制度は、一人親方が労災組合に加入することで、労災組合がかわりに労災保険を取得してくれるようなイメージになっています。そして、この労災組合の特徴は組合ごとに違い、一人親方同士の交流を積極的に推奨する組合や様々な営業をかけてくる組合などがあります。安いからといって安易に加入すると思っていたのと違うことに労力を注がなければいけないようになってしまうので注意が必要です。

まとめ

以上、一人親方の労災保険の特別加入制度について紹介しました。組合の特徴や注意点を踏まえて、労災保険に加入するようにしましょう。