建設業界で多くの人が連想する職人が大工ではないでしょうか。職人として働いていきたい人や転職を考えている方に向けて、今回は建物を建築・修理する大工の平均年収や仕事内容について紹介していきます。
大工とは
大工の仕事は、建物の骨組となる柱や梁、天井、外壁、内壁、床などの下地を、木材でつくることです。
具体的な仕事内容は、作業所で行う「加工」と、現場で行う「組立」の2つが主であり、重い資材を扱うための屈強な筋力と体力、そして繊細な職人技術が要求されます。また、多忙な現場監督に代わって、左官職人や内装業者、電気・水道・ガス設備業者などを取りまとめ、現場全体を指揮することもあります。
また、これ以外にも建築士が作成した設計図面を読み込んだり、パソコンで工程管理を行ったりなど、事務所でのデスクワークもあります。近年は、建物を新築するだけでなくリフォームを依頼する人も増加しており、大工は手堅いニーズが見込まれる専門性の高い職業です。
大工の主な業務内容
加工作業
大工というと、建築現場での仕事をイメージする人が多いかもしれません。しかし、木材などの建築資材はそのままでは使えないため、現場に入る前に各工務店の作業所において加工作業を行う必要があります。
ノコギリやノミ、カンナなどを使って、設計図面通りに資材を切り出したり、寸法を調整したり、表面をきれいに仕上げたり、「ほぞ加工」と呼ばれる木材の接合作業を行ったりします。これらの加工作業の精度次第で、建物の完成度に大きな差が生じるため、大工は長い時間をかけて技術と経験を養っていくことが必要です。
日によっては、1日中作業所での加工のみに終始することもありますし、また見習いや新人時代のうちは、そもそも作業自体を任せてもらえず、工具類の手入れ作業だけということもあり得ます。
組立作業
現場での組立作業は、「建前」と呼ばれる建築物全体の骨組みから始まって、屋根の下地組み、サッシの取り付け、外壁・床下・天井の下地組み、内壁の下地組み、床材・内壁板貼付という工程で進みます。
木造の建物は、基礎部分や構造体部分に雨水が染み込んでしまうと取り返しがつかないため、建前を1日~2日で終わらせた後は、一気に外壁下地まで施工します。その後、屋根と外壁下地を防水シートで覆う作業を施して、残りの組立作業を進めます。
なお、作業所で図面通りに加工しても、いざ実際に現場で組み立ててみると、資材の寸法が合わないというケースもめずらしくなく、大工が建築士に状況を説明し、その場で図面を引き直すこともよくあります。
事務作業
大工は、上述したような力仕事・職人仕事に加えて、設計図面を読み込んで段取りを考えたり、施主と打ち合わせするなど、事務所でのデスクワークもあります。
近年は、ほかの多くの職業と同じように、大工も機械化・IT化が進んでいて、CADを用いて図面を作成したり、エクセルを用いて工程管理表を作成することもあります。とくにCADを扱える人はどこの工務店でも重宝されやすく、スキル次第では、まだ現場技術が伴っていない若手時代から活躍できるかもしれません。
大工の給料は?
新人大工の初任給は、約16万円と言われています。新入りの大工は「見習い」として扱われます。見習いとして下積みを積んでいる間は、日当は1万円前後であることが多いようです。見習いのうちは給与が低いだけでなく、専門の大工仕事すら任せてもらえないことがほとんどです。
大工は、見習いからスタートして技術を磨いて行き、経験と技術に応じて日当が上がっていく仕組みになっているところが多いようです。企業の規模にもよりますが、完全に職人気質の業界であることから、新人の間は待遇的にはかなり厳しいといえるでしょう。
大工の収入は日給換算で計算される
大工の給料はいわゆる「日当」と言って、日給あたり〇円で給料が加算されていく仕組みになっています。これは昔からの習慣で、悪天候や景気、公共事業のボリュームなどで事業所の収入自体が変動するために、現場作業員の収入も日当換算扱いとなっています。
見習いの間、日当はおよそ1万円で、勤務日数に応じて収入が上下していく形です。残業代は出るところもあれば、固定日給で残業代が出ないところもあります。日当は経験年数やスキル、地位に応じて上がっていきます。まさに「手に職」と言った形です。
大工は、見習いとして必死に働き、徐々に技術を会得し研鑽して、この「日当」を上げていくことで給料アップが見込めるという非常に職人気質である仕事です。しかし実際に技術を磨いていくのはかなり過酷で、なかなか収入をあげるのは大変で、それが原因でかなり割に合わない業界と言われています。
悪天候だと仕事が休み、給料は発生しない
大工は日中吹きさらしで働く仕事です。足場を組み、その上で作業を行いますし、現場によっては高所での作業になることもあり、大変危険が伴う仕事です。雨や風が強い日は、事故の可能性が急激に高くなります。
そのため危険を防ぐために現場監督の指示の下、外作業はストップとなり、現場作業員は休みになります。しかし、給料は作業を行った分の日当なので、仕事が休みになった場合、給料は発生しません。休みが多ければその分収入は減っていきます。雪国で働く大工の場合、冬はほぼ仕事がないということも多々あります。
それ故に、大工は正規で就職しても不安定な職と見なされることが多いです。しかし必ず日当制であることはなく、大手ハウスメーカーの大工の場合だと月給制など務める企業によっても異なるようです。
大工全体の平均給与は30万円前後
大工全体の平均月額給与は約30万円となっています。大工は経験に応じて給料が上がる職人社会であることから、40代前半の年収の伸びが大きいため、平均給与の全体の統計としては比較的高めとなっています。
しかし右肩上がりで給与が伸びる職業でもなく、年齢別の平均給与を比較すると40代後半からは再び下がり、その後ほぼ横ばいで緩やかに下がっていきます。最も年収が低いのは10代で、月額換算で平均16万円ほどです。
大工全体の平均年収は、300~400万円
大工全体の平均年収は約355万円となっています。実際には、平均年収にバラつきが大きい職種であり、公共事業がどれだけあったかや、景気の変動によって大きく収入が左右する大工業界の特徴でもあります。
ここ10年ほどで、概ね350~410万円の範囲に治まります。日本の平均賃金がおよそ430万円であると考えると、大工の年収は平均より下であることがほとんどであるようです。
年収が大きく上がるのは30代後半~40代前半
一人前の大工になれば、日当の平均は18,000~20,000円あたりになっていきます。現場監督や棟梁と呼ばれる立場になれば、年収は大きく上昇します。また大手のハウスメーカー勤務の大工の場合、係長、課長、部長と昇進していくに従って、年収が大きく増えていきます。
一人前の大工になるには、最低でも10年は見ておいた方がいいと言われますが、現場の上に立つ年齢になるのが、ちょうど30代後半からとかんがえられるので、棟梁として現場を回すようになれば、そのぶんだけ年収は上がります。大手企業勤務の大工で部長クラスになれば年収は600~700万円になっていきます。
独立して工務店を開業もしくは一人親方になると、年収は桁違いになることもあります。大工を目指す人の多くが、将来的に独立を考えているでしょう。独立する場合の進路としては、工務店を開業するか、一人親方(自営業)になるかのどちらかです。
工務店を開業する場合は、小規模な工事から始め、徐々に請け負う仕事と工務店の規模を大きくしていくことで年商を増やすことになります。ちなみに500万円以上の大規模工事を請け負う場合、建設業の許可申請が必要です。
一人親方とは、一人で大工仕事を引き受ける立場を言い、一通り一人前の大工として経験を積み、担保となる技術と人脈と信頼を得てから独立するというのが大まかな流れとなります。一人親方の場合だと、仕事が入るとその都度自分の手が回らない範囲は職人を雇い、報酬を払うことになります。先方の請求分だけを払えば良いので、残りの報酬は自分のものとなります。
まとめ
見習いから独立を目指す際に、大切なのは培った技術と人脈です。これがないと独立しても上手くはいかず、雇われ大工に逆戻りになることもありますし、実際にそうした例は後を絶たないようです。頑張れば独立した一人親方や、工務店経営の大工の年収は900万~1,000万円に届くこともあります。
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