建具工の仕事内容
建具工の仕事は一言でいうと、建具(戸、扉、窓、襖、障子など、開閉機能をもった仕切り)を製作し、現場に取り付ける仕事です。新設のほかに、修理や調整も手掛けます。
かつては木製の和建具がメインでしたが、時代の流れによって現在では仕事内容にも幅が生まれています。以下で代表的なものをご紹介しましょう。
伝統技術を用いた和建具を扱う建具職人
昔ながらの木製建具を手掛ける建具職人です。木材の性質をしっかりと理解し、設置後に建具がゆがむことがないよう、鑿(のみ)や鉋(かんな)などの道具を駆使して製作します。木の種類や乾燥状況、木目などの見極めと確かな腕が重要で、建具職人の中でも熟練の技が求められる仕事です。
障子や襖(ふすま)、格子戸や門戸などの伝統的な和の建具を手掛けます。また、中には繊細な組子細工に特化した組子職人もいます。
さらに、こうした建具だけでなく、表具(掛軸・屏風・和額など)を手掛けることができる表具師を兼ねた職人もいます。表具師は、掛軸、屏風、巻物、衝立、額などの新調・補修のほか、障子や襖の新調・張替えなども行う職人です。
これらの仕事は、自分の手でものを作ることに関心のある人、日本の伝統工芸に興味のある人、伝統技術を身につけたい人におすすめです。技術を習得するまでには長い時間がかかりますが、その分習得した技術は自身の強みとなるでしょう。
フラッシュドアや洋建具を扱う建具職人
近年の住宅建具で多くみられるのが、フラッシュ構造の建具です。枠組みされた芯材に合板(ベニヤ)などを張り合わせてパネルを作る構造です。木工に携わる人の中にはこのフラッシュ構造を劣ったものとする人もいますが、フラッシュ構造の建具を製作するにもそれなりの経験が必要です。正確に枠を組み上げ、できあがった枠組みに板材を取り付けるプレス作業、扉の寸法に合わせサイズを整える寸法カット、ドアノブや鍵穴用の穴を空ける加工など、それぞれの工程で素材を見極めながらの細やかな作業が必要になります。建具にとって欠かせない精緻な寸法など、高品質な製品を製作できることが求められる仕事です。製作・取り付けのほか、開閉をスムーズに調整したり、蝶番や鍵の交換なども行うことがあります。
まずはフラッシュドアで経験を積み、その後本格的な和の建具の道へ進むという職人も多いようです。
サッシなどの金属製建具を扱う建具職人
建具屋の仕事は、かつては襖や障子などの木製建具がメインでしたが、1970年代頃からの人々の生活スタイルや住宅の洋風化などに伴い、とくに窓枠などは、サッシなどの金属製建具に取って代わられました。
こうしたサッシなどの金属製建具を扱いたい場合、建具屋ではなくサッシ屋に就職するのがよいでしょう。多くの場合、窓ガラスを扱っているガラス屋がサッシ屋を兼ねています。
また、建築現場へ行ってサッシを取り付ける作業を行うのは、「サッシ工」と呼ばれる職人です。サッシの施工は技術的に見ても非常に特異性のある工事で、建具職人とはまた別の専門性が必要になります。
本来は窓枠のことですが、現在では一般に金属製の窓枠を指します。
かつては建具屋が木製の窓枠を製作していましたが、時代とともに鋼製やアルミニウム製のものが主流となり、その仕事はサッシ屋に取って代わられました。
造作家具の製作まで手がける建具職人
建具屋の中には、建具の製作のみならず、室内造作家具の製作まで幅広く手がけるところも増えてきました。本来は建具は建具屋、家具は家具屋と別れていましたが、木を扱う点や加工機械などが似ていることから、木工産業全体の衰退に伴い、次第にどちらも兼ねる形態が増えてきたのです。
建具職人の技術を生かして、既製品にはないサイズやデザインのオーダー家具を作成することが多いです。家具の製作から修理、金物の取り替えなども行います。また、中には幼児用の安全柵や仏壇など、様々なものを手掛ける建具屋があります。このように建具だけでなく家具などの仕事もこなせるようになれば、仕事の幅が広がりますね。
建具職人の年収
建具屋の数は減少傾向にあります。そのため建具職人になりたくても、建具職人の仕事だけで食べていけるのか? と不安に思ってなかなか足を踏み出せずにいる方も多いと思います。ここで、建具職人の年収について見ておきましょう。
建具職人の平均年収は、およそ350万円と言われています。しかし、下の表を見ると、従業員数が1000人未満の規模の場合は、300万円前後ということが分かります。
国税局の平成27年民間給与実態統計調査によると、民間企業の会社員の平均年収は420万円なので、建具職人の年収は、一般的なサラリーマンに比べて低いと言わざるを得ません。
建具職人としての仕事を得ながら、平均的な安定を手に入れたい場合には、規模の大きな職場を探す必要があります。いずれにせよ、将来家族を持つ、あるいは今家族がいるという場合には、ある程度堅実に過ごす必要があるでしょう。先々の人生設計も考慮しながら、現実的な目で職探しに取り組むと安心です。
建具職人になるには
特別な技術を持つ職人という仕事は、誰でも目指せるものなのか、未経験からでも大丈夫なのか、などといった疑問がありますよね。この章では、建具職人になる方法と建具職人に向いている人をご紹介します。
職業訓練校か建具屋へ就職
建具職人になるためには、特に資格や学歴は必要ありません。高校や大学を卒業後に建具会社に入社したり、あるいはいったん職業訓練校へ行ってから就職するのが一般的です。就職してからとにかく現場で技を磨いていくのが、建具職人へのスタンダードな道です。木製建具の場合は木の種類や木目の活かし方を、金属製建具の場合は素材や性質を見極める必要があり、一人前の職人となるにはおよそ10年ほどかかるとも言われています。
また、建具の製作に必須となる資格はありませんが、「建具製作技能士」と呼ばれる国家資格を取得していると仕事の幅が広がります。受験資格には一定期間以上の実務経験が必要なので、しっかりとキャリアを積みながら、資格取得を目指していくと良いでしょう。この資格は、建具製作のプロフェッショナルとして必要な能力を備えているという証にもなるため、取得すれば建具職人としての信頼を得ることにもつながります。
建具職人に向いているのはこんな人
建具職人に欠かせない技術といえば、やはり開口部の寸法に建具をぴったりと合わせることです。これができなければ一人前の建具職人にはなれません。そのため、手先が器用で細かい作業に集中できることが必須といえます。また、日常の生活の中で使う建具は、寸法に狂いがないことはもちろん、建付けもしっかりとしていて住人にストレスを与えないことが大前提となります。そのため、使う人の暮らしをきちんとイメージできる想像力も重要です。
上記に加えて、ものづくりや家づくりに携わりたいという熱い思いや、木材や金属などの素材、それらを加工する道具などにも興味をもって熱心に勉強していける人だと良いでしょう。
建具屋・建具職人の求人の探し方
いざ建具職人の求人を探そうと思っても、なかなか思うような求人情報が見つからないということはありませんか? ここでは、建具屋や建具職人の求人情報の探し方のコツをお伝えします。
身につけたい技術を習得できる職場を選ぶ
建具の求人といっても、様々な仕事内容があります。建具の製作をメインで行う職場もあれば、建具の取り付けが業務の中心という場合もあるでしょう。また、扱う建具の種類についても、1章で確認したように、伝統的な和建具やフラッシュドア、それに建具の範疇を超えて家具製作にまで及ぶこともあります。その中で、自分は和建具を専門にやりたいのか、建具にとどまらず造作家具まで幅広く手掛けられる職人になりたいのか、など、どのような仕事をしたいのかを明確にすることが肝心です。自分の目指す職人像をはっきりさせ、やりたい仕事のスキルが身につく職場を選ぶことができれば、就職してから「イメージと違った」などの理由で離職してしまう事態を防ぐことができますよ。
働く地域を限定しない
建具の求人は数が少なく見つけにくいと感じている方も多いかもしれません。なかなか良い求人情報を見つけられずにいる場合には、働く場所を限定しないか、あるいは今探している地域よりももう少し範囲を広げて探してみることをおすすめします。経済的に栄えている都市部だけでなく、地方にも歴史のある建具屋さんは点在しているものです。まずはお近くの地域や住んでみたい地域に気になる建具屋さんがないか確認してみましょう。
まとめ
建具の求人を探す際、インターネットで検索してもあまり多くの情報はヒットせず困ってしまった、なんてこともありますよね。大手求人サイトを地道にチェックしていくのも方法のひとつではありますが、いっそのこと気になる建具店のホームページをひとつずつチェックしていくほうが近道です。このとき、先ほどもお話ししたように、まずは地域を限定せずにいろいろな企業を見てみることをおすすめします。たくさん見比べて、その中から自分にとって魅力的と思える職場を選べると良いですね。ホームページに採用情報が載っていない場合でも、一度問い合わせてみると思いがけず採用につながるというケースもあります。諦めずにチャレンジしてみてください。