鉄工の仕事内容
鉄工の仕事は細かく分けると、様々なジャンルがありますが、基本的に共通しています。
まず鉄工所は、当然ながら”鉄材の加工”を行っております。鉄工所と呼ばれている工場は、メーカーの下請けであることが多く、最終的な製品の”部品”を作っていることが多いです。
パーツ通しをくっつける”溶接”や、板状の鉄を折り曲げる”曲げ加工”や、巨大な鉄板から任意の形に切り出す”溶断やレーザー加工”などが主な作業となってきます。
自動車関係や航空機関係も、このような鉄工所が鉄材の加工を、一番最初にやってくれるからこそ、世の中の生産は成り立っています。
鉄工のやりがいや面白さ
メーカーからの注文が多い為、その工場で生産する物はパターンが決まっております。例えばトヨタのプリウスを作るための依頼であれば、それに使われる部品が変わったりなどはそうそうありません。
メーカー側は、鉄工所側で作ってくれた製品が無いと、組み立てることが出来ず、世の中に最終的な製品が出回りません。その為、メーカーからの納期には確実に答える必要があります。
そうなると必然的に、パターンが決まっている製品を作り上げるための”効率”が重要となってきます。
”効率”と言うのは、個人レベルの「仕事が早い」とかではなく、工場全体です。工場全体で効率化の工夫を行いつつ、個人レベルでの工夫があります。
この仕事のやりがいは、作り上げたときの達成感と、職人のように日に日に技術アップしていく事で”自分の成長”を作業量で直接感じることが出来る点にあるでしょう。
鉄工のデメリット
当然ですが、洋服や日用品を扱っているわけではないので、鉄材によるケガには十分注視しなければなりません。
断面が尖っている。断面が鋭利。だけではなく、見た目以上に重いです。経験者は”見て、すぐに危険度”をイメージできるのですが、慣れるまでは、先輩社員からの注意指導は必ず守りましょう。
会社としても”安全性”は最重要課題となっており、国からもいろいろな指導を受けているので、作業者がよっぽどのことをしない限りは、危険な事は起きません。確率は、自動車を運転していて自分の不注意で交通事故を起こす事と同じくらいでしょうか。
鉄工に活かせる資格
鉄工所では、3つの資格の需要がとても高いです。
玉掛
床上操作式クレーン
フォークリフト
この3つを持っていれば、重い鉄を自由に運ぶことが出来ます。そして、これらの資格を持っている作業員は多くはありません。
また、クレーンやフォークリフトの設備を使って運搬する際は、必ず資格保有者の存在が必要です。
ただし、働きながら資格取得の支援を行っている会社も多いので、資格がないと働けないという事はありません。むしろ、そういった作業を経験した人でないと、基本的にそれらの資格には興味すら湧きませんので、未経験者で資格保有者という人はものすごく少ないです。
鉄工所の仕事に向いている人・向かない人
鉄工所での仕事は、”作業書”となる「今日はどんな仕事をこなせばよいのか?」という思いに対する指示みたいな書類があります。その為、営業マンのように自ら仕事を作り出したり、業績を追いかけたりする必要がありません。
その日出勤すれば、その日の仕事がもう出来上がっています。そして実際の作業が始まりましたら、パターンの決まった工作を繰り返すことになるので、何も考えず黙々と作業をすることが出来ます。
「毎日毎日、自分で何でも考えないといけない仕事は面倒だ!」という人には向いています。
逆に、「外に出て羽を伸ばしながら、営業などを行って自分の業績を追いかけたい」と思っている人には向きません。
鉄工所でのキャリアパス
こういった、ものづくりの仕事でのキャリアパスのほとんどが「職人への道」です。上にも書きましたが、工作の延長です。陶芸家や芸術家たちと近い感じになります。ものづくりの製造においては、”独創性”などを持ち込んではダメですが、完成品の”完成度”や”作業速度”は大いに職人技として磨かれていきます。
しかし、そうこうしているうちに新入社員も続々と入ってきますので、押し上げ方式で”指導者”へと変化してきます。そこまで来ると、事務所作業が多くなってくる頃ですので、次は”安全衛生責任者”といったような職務につくのが一般的です。
鉄工所業界の最近の動向
メーカーの生産工場のような大きな建物では、組立作業のロボット化が進んでいますが、鉄工所などの工場ではそううまくいきません。まだまだ”人の手”が必要です。
作業内容が完全に同じなのであれば、ロボット化は出来ますが、実態はそうではありません。いくつもの納品先を抱え、それぞれの注文も無数にあります。それらの要望に対応していくには、まだまだ人間にしかできない作業です。
ものづくりの需要が無くなることは無いと思いますが、景気に左右されやすい業界の一つと言えます。
未経験で鉄工を目指すには
鉄工所勤務を目指すにあたって、用意しないといけない事はありませんし、経験も必要ありません。鉄工所デビューで一番よく聞く理由が、「外回りは疲れた。工場で落ち着いた仕事生活をおくりたい」という理由です。
実際、工業団地内の鉄工所などはとても穏やか雰囲気で満ちています。10時の休憩には、工場前の自動販売機の横が喫煙スペースとなっており、そこでの談笑があったり、勤務中も鉄材の加工音だけが流れていたり、退勤後も駐車場でコミュニケーションをとっていたりと、とても平和を感じます。
「ちょっと今の仕事に疲れてきた。」という人には、こういった工場で家族のような環境下で仕事生活をおくるのもアリなのではないでしょうか。
鉄工の平均年収
鉄工の年収は全国で444.0万円の水準、男女差は約128万円です。まず、全国における鉄工の年収を性別にみてみると、男性の場合で448.0万円、一方で女性の場合では320.2万円の水準、男女の合計では444.0万円となっています。その為、鉄工の年収における男女差は127.8万円の違いがあることが分かります。
また、男女の合計における年収水準が男性の場合に近い理由として、鉄工の全体数のうち男性の占める割合が大きいことが考えられます。
年齢別では、55歳-59歳が539.1万円で最も高い水準になりました。
次に、全国における鉄工(男性)の年収を年齢別にみてみると、19歳以下の270.0万円から40歳-44歳の520.1万円まで段階的に増えていることが分かります。そこから鉄工の年収は概ね横ばい傾向で推移し、55歳-59歳で539.1万円と最も高い水準となっています。その後は減少傾向にあり、60歳-64歳で478.7万円、65歳-69歳では397.9万円と400万円を下回る水準まで落ち込んでいます。
全国における年収水準の傾向
全国における鉄工(男性)の年収水準を見てみると、2010年の396.7万円から2013年には370.8万円まで落ち込みましたが、その後2016年までに433.6万円の水準まで増加となりました。その後は、2017年の431.5万円、2018年の435.1万円と概ね横ばいで推移し、そこから2019年の時点では448.0万円と若干ながら増加していることが読み取れます。
まとめ
以上、鉄工について紹介しました。鉄工は鉄を扱うスペシャリストだと言えるでしょう。今後、機械の導入による作業のしやすさが向上することも予想され、働きやすい職場環境を実現するかもしれません。