一人親方とは

主に建設業において個人で事業を行う一人親方ですが、今まさに人材不足に陥っている建設業界でどのような存在になるのでしょうか。人材不足に付いてや現場作業以外の仕事について解説していきます。

建設業界の人材不足

建設業界については「建設バブル」と謳われるほど、国内の建設需要は高い状態にあります。新築工事における市場は縮小が予測されておりますが、老朽化しているインフラの維持管理、防災対策、大阪万博やリニア新幹線によるまちづくり、海外へのインフラ輸出などにより、今後も建設マーケットは堅調に維持すると予測されております。

このように建設需要は堅調ですが、建設業界における課題は何があるでしょうか。実は建設業界における最大の課題は人手不足です。中でも、一人親方の高齢化と若手の建設離れによる人手不足は大きな社会的問題となっております。

そんな人手不足問題を抱える建設業界ですが、昨今では職人の社会保険総加入化が大きなテーマになってきます。昔は工事現場の数が多く、大きなプロジェクトでも非正規雇用のアルバイトが普通に働けている状態でした。

しかし、現在は建設業界においても新しいシステムが導入され始めており、建設キャリアアップシステムにて技術者登録を行わなければ、一人親方が一部の現場へ入れないなど、規制が厳しくなってきております。

一人親方はいなくなるのか

い慣習が多く残る建設業界ではありますが、上記のように新しい仕組みやシステムが徐々に浸透しており、一人親方の働き方も少しずつ変化しております。そんな中、税金や労務などの観点で問題が多い一人親方について、国家はどんな対策を講じているのでしょうか。

【偽装一人親方問題とは】

偽装一人親方とは、実態が雇用された社員と変わらないのに、外注の一人親方として、社会保険料等の負担の逃れている一人親方のことを言います。

このように、建設会社や一人親方が、社会保険等の削減を目的として、職人を独立させながら従来と同一の条件で働かせる「偽装一人親方」は以前から問題視されておりました。

これは、違法に労働コストを削減した建設会社が儲かり競争力を高めてしまうことに繋がりますので、建設業界の競争環境をゆがめる弊害があるため、業界全体においてもマイナス効果になります。

【職人の社会保険加入化の流れ】

偽装一人親方問題に対して、厚生労働省は、元請け業者に対し下請け業者の労働者全ての保険加入などを把握するなど、元請けにも責任が有るよう社会保険への加入について厳格化の動きを見せております。

具体的には2015年8月以降、入札公告を伴う工事で、元請業者が社会保険未加入の業者と一次下請け契約を結ぶことが禁止されました。これに伴い、元請け業者は不正な長時間労働であったり、保険料逃れを前提とした単価の設定が不可能になり、偽装一人親方を使う事が出来なくなりました。

きちんとした一人親方であれば法令上も問題ありませんし、一人親方向けの公的保険も用意されております。中には諸手続きなどが面倒な元請け業者が、正規の一人親方を排除する動きが出ないとも限りませんが、工事進捗や現場規模に合わせた微調整が必要な世界ですから、一人親方が完全に無くなるという事は考えられません。

しかし、今後は職人が社会保険に加入しなければ現場仕事が行えないよう規制がどんどん厳しくなっていくでしょう。世の中全体の動きもそうですが、特に建設業界においては、正社員を増やして外注(一人親方の活用)の比率を下げていき、社会保険料をしっかりと国へ納めて、雇用の安定化を図ろうといった取り組みが進んでいます。

一人親方労災保険といった保険もあり、現在は個人事業主扱いにして現場へ入ることが許されておりますが、国家が正社員雇用を推奨しており、個人事業主のような一人親方としての働き方は、一部難しくなることが予測されます。

【2023年にスタートするインボイス制度の影響】

インボイス制度とは、簡単に言うと請求書保存に関する新しい取り決めのことです。何かを売買する度に発生する消費税を、事業者同士、または事業者と個人が書類上での正確なやり取りを担保できるようにすること、そして消費税が正しく納付されることを目的としております。

2023年10月よりスタートするインボイス制度ですが、一人親方や個人事業主、フリーランスにとって大きなインパクトを与える制度になっております。

なぜ、これらの働き方に対して、インボイス制度が深刻な問題となるのでしょうか。

2020年10月1日よりインボイス制度が本格的にスタートすることで、大きく変化することの1つとして、今まで納税の対象外とされていた年間売上1,000万円以下の一人親方でも、消費税10パーセントの対象とすることが大きなポイントです。

これにより、年間売上1000万以下の一人親方がもれなく10パーセント売上が減りますから、廃業もあり得る制度となっており、サラリーマンとして働くことを視野に入れなければならなくなります。個人や個人商店から、例外なく税金を受け取るための制度なのです。

現場作業以外の職種

今後職人として現場から離れていかなければならないこともあるでしょう。現場以外での職種を紹介します。

【施工管理技士】

施工管理技士は、施工全体の管理を行います。職人のように施工作業そのものを行うわけではなく、施工現場を含む工事全体を俯瞰して管理します。現場の安全管理はもちろんですが、施主の要望や予算に合わせた施工計画、スケジュール管理、品質管理などが主な業務となっており、デスクワークが多めです。施工作業そのものを理解している元職人は、年齢次第では施工管理職として重宝させる可能性が高いのでおすすめです。

【製造業】

製造業も職人の経験を活かせる仕事です。購買管理などといったものがあり、適切な品質の資材を必要な量、必要な時期に調達する役割があります。施工管理職の品質管理や原価管理と共通する仕事が多いうえに、現場とのコミュニケーションも欠かせないため、製造業でも活躍できる人材と認められるでしょう。

また、製造業は労働時間が固定、かつ休日もしっかりとれるので、ワークライフバランスの良さも製造業の魅力です。

【工事営業職】

工事営業職は経験やスキルなどを技術者ほど問わないことが多く、スキル面での採用ハードルが低いため異業種でも転職しやすい特徴があります。肉体労働である職人の経験者は、体力と忍耐力、フットワークの軽さが営業職に適していると評価されるようです。

また、職人はコミュニケーション能力が欠かせないため、営業職でも活躍できるという見方をされる採用担当者もいます。建設業界では中々珍しいですが、ワークライフバランスが充実し、給与水準が高く、残業が少なく休みがとりやすい法人営業の求人などはおすすめです。

まとめ

以上、一人親方や建設業界について紹介しました。人材不足であり、厳しい状況もあるものの一人親方の重要性は高いところにあるため、収入アップのチャンスともいえるでしょう。

もちろん違う方向性を模索するのもありだとは思いますが、一人親方として駆け上がっていくのもいいと思います。これから独立を考えている人は、資金や受注など可能な限り準備を怠らないようにしましょう。着実と信頼を培い、根のしっかりと張った一人親方になってください。